名詞 → 動詞
ユーザーの操作手順として、まず対象のオブジェクト(名詞)を指定し、次にアクション(動詞)を指定するようにする。
理由:UIをオブジェクト指向にし、モードレスインタラクションを実現するため。
まず対象のオブジェクトを指定して次にアクションを指定する
効能
- 関心の対象が目に見えるオブジェクトとして画面上に表現されているという GUI の特性が活きる。
- 動作よりも先に対象物を意識するという、現実世界で我々が物を扱って作業を進める感覚に準じた操作ができる。
- 操作を開始する前に頭で手順を組み立てる必要がないので、操作方法を習得しやすい。
- 対象指定をアクション指定より前に行うことで、「対象の指定待ち」のモードが発生せずにすむ。
- システムに用意されたアクション(コマンド)をすべて覚えていなくても、指定した対象物に応じて限定されたアクションリスト(コマンドメニュー)を利用することで、簡単にコンピュータを扱える。
- 対象を指定した後で操作を取りやめたくなった時に、キャンセルのアクションを明示的に行う必要がない。
- 複数のオブジェクトに対してひとつの命令を下したい場合、複数オブジェクトの選択操作が完了したタイミングを明示する必要がない。アクションを選ぶ操作がそれを代行する。
- 画面上のオブジェクトにマウスなどで働きかけながら作業を進めるという直接操作が可能になる。
用法
- ユーザーの関心の対象、つまり操作の対象となるオブジェクトをまず画面上に提示し、それを選択することから作業が開始されるようにする。
- アクションリストは、メニューバー、コンテクストメニュー、右下メインボタン、ツールボタン、モードレスなプロパティシートなど、一般的な表現によって提示し、ユーザーがオブジェクトを指定した後で何をすればよいのか分かるようにする。
- オブジェクトが選択されていない状態では、アクションを指定できないようにする。例えばメニュー項目をディスエーブルにするなど。ただし、対象物を必要としないアクションについては例外。
- オブジェクトの指定には、アイコンやリスト内項目の選択操作以外にも、文書中の特定文字列の選択、対象ウィンドウのフォーカス、対象フォームへの入力といった操作も含まれる。
- あるオブジェクトに対する主要なアクションがユーザーにとって明確である時、「オブジェクト指定→アクション指定」という二段階の操作を、「オブジェクトのダブルクリック」という操作で代行できてもよい(ダブルクリック実行)。例えばフォルダを選択してメニューから「開く」を選ぶ操作を、フォルダのダブルクリックで代行できるようにする。
- あるオブジェクトに対する主要なアクションがユーザーにとって明確であり、またアクションがモードレスで可逆的である時、「オブジェクト指定→アクション指定」という二段階の操作を、「オブジェクトのシングルクリック」だけで行えるようにする(シングルクリック実行)。例えば選択したリスト項目の内容を隣のペイン内にプレビューさせるなど。
リスト内の項目を指定してからアクションとしてのボタンを押す
注意書き
- システムがモーダルインタラクションをベースにデザインされている場合は、「動詞 → 名詞」の操作手順が基本となる。
蘊蓄
CUI(コマンドライン・インターフェース)では、通常、「動詞 → 名詞(目的語)」の順序で操作を行う。これは、コンピュータへの指示文を英語の構文にそろえることで、英語圏のユーザーが操作方法を学習しやすくするためであった。しかし現実世界のモードレスな作業環境を模した GUI では、コマンド先行のモーダルな操作手順は適当でない。「名詞(目的語) → 動詞」の順序は日本語の構文と同じであり、現実世界の非言語的状況ではむしろこの方が自然である。例えば我々は買い物をするとき、最初に品物を選び(名詞の指定)、次にその品物をレジに持って行って購入の意思を表す(動詞の指定)。この行動パターンは、自然言語には依存しないものだろう。