ユーザーとシステムの間のやりとりはすべてヒューマン・インターフェースを通じて行われます。
ソシオメディアは、UXの専門会社としてこれまで様々なデジタルプロダクトのヒューマンインターフェースをデザインしてきました。特に、大規模エンタープライズシステム、基幹系業務アプリケーション、産業用アプリケーション、専門職種向けアプリケーションなどの、複雑かつビジネスに直結したソフトウェアのデザインを多く手がけています。
コンセプト開発プロセス全体を司るデザインリード。
サービスやプロダクトのデザインに方向性と一貫性を与えるのは、仕様書でもガイドラインでもありません。それは強力なデザインコンセプトです。ユーザーの操作に応じてダイナミックに変化しつづけるソフトウェアは、そのすべての状態を事前にドキュメント化して共有することはできません。そのため開発に関わるメンバーはデザインに関する大小の意思決定を逐次行う必要があります。デザインコンセプトが、そのようなあらゆる意思決定のよりどころとなるのです。
ヒューマンインターフェースのデザインではまず、デザインリサーチによって把握されたユーザーモデル、サービスドメイン、デザイン要件、またその背景にあるビジネスゴール、市場ポジショニング、技術制約などをデザインチームで共有します。そしてアイディエーションのためのディスカッションを行い、様々なバイアスを払拭しながら、革新性を持ったコンセプトを決定します。目指すべき経験価値を身の回りにある日常的な物や概念になぞらえたコンセプトステートメントを作成し、デザインチームが開発プロセスを通じて何を重視すべきなのかを明らかにします。
さらに、そのコンセプトを実現するために実装すべき特徴的な機能、表現、操作性などを、デザインフィーチャーとして定義します。サービス/プロダクトが目指すゴールとしてのデザインコンセプトと、それを具現化する手段としてのデザインフィーチャーが、開発に関わるすべてのメンバー、およびプロモーションやサポートを行う各担当者にとっての、最上流の意思決定指針となります。
シンプリファイあるとよい機能はない方がよい。
インターフェースデザインにおけるパレートの法則は「ユーザーの80%は全機能の20%しか使わない」というものです。その20%に注力し、その他の機能の優先度を下げることで、サービス/プロダクトの利便性は向上します。ヒューマンインターフェースのデザインには選択と集中が必要なのです。
コンセプトで示されたサービス/プロダクトの価値がユーザーコンテクストとどのように適合するのかを、ストーリーボードやエクスペリエンスマップによって確認しながら、実装を検討している機能をリストアップします。それらを想定する利用者の割合や利用頻度の観点からグルーピングし、実装の優先度を決めるマッピングを行います。
このような検討を行う目的は、ヒューマンインターフェースをできるだけシンプルに保つことにあります。ユーザーが求める機能をすべて盛り込むと、システムは複雑になり、誰にとっても使いにくいものになります。また蓋然性のバランスが取れていない要件はプログラムを複雑にし、バグが増える原因になります。
多くのシステム開発案件が、ユーザー部門やプロダクトオーナーが作成した要求仕様をすべてそのまま盛り込もうとするために難航します。あるいは、その困難にチャレンジすること自体がデザイン作業の目的になってしまいます。しかし、複雑なシステムをなんとか設計実装できたとしても、それがユーザーに利便性をもたらすとは限りません。むしろ、苦労して開発したシステムを使えないものにしてしまうリスクを高めます。つまり「あると尚よし」の機能は、ない方がよいのです。
参考: あるとよい機能はない方がよい
オブジェクトモデリング仕事がデザインを決めるのではなく、デザインが仕事を決める。
真にユーザーの生産性を高めるヒューマンインターフェースは、仕事のドメインモデルを適切に反映した情報オブジェクトに対して、ユーザーが自らの工夫をいかしながら自由に働きかけられるものです。サービス/プロダクトのインターフェースの要は、どのような情報オブジェクトをどのようなスコープで提示し、それらがユーザーのどのようなアクションによってどのように互いを呼び出し、結果がどのような意匠で表現されるのか、という部分にあります。これらを検討するのが、オブジェクトモデリングです。
オブジェクト指向分析やドメイン駆動設計で行われるエンティティ定義をデザインにも適用し、ユーザーがその仕事や作業について持っているメンタルモデル、あるいはそのサービス/プロダクトが新たに提供しようとしている仕事モデルを情報オブジェクトとして目に見える形に変換し、ユーザーとの合理的なインタラクションを想定します。
オブジェクトモデリングを適切に行うためには、ヒューマンインターフェースのデザインパターンを熟知している必要があります。ソフトウェア理論として実装可能な要件であっても、画面構成の論理性や人の認知特性に照らして有用であるとは限らないからです。これまで様々なアプリケーションで用いられその有用性が担保されたインターフェースのデザインパターンを応用し、必要があれば、デザインからのフィードバックによって元の要件を変更することも想定すべきです。
有意義なヒューマンインターフェースを考えることは、デジタルネイティブの視点で本来の仕事の意味とゴールを考えることでもあります。そのため、オブジェクトモデリングの過程で、従来からの業務フローが持っている非効率性や曖昧さが顕在化することもあります。ソシオメディアが設計するヒューマンインターフェースは、しばしば、クライアントに驚きと議論をもたらします。それは、担当者の想定よりもさらに本質的で深い課題に対してアプローチするからです。私たちがデザインするヒューマンインターフェースは、常にクライアント組織におけるデジタルトランスフォーメーションを指向しています。デザイン作業は現状の仕事のあり方をインプットにして開始されますが、そのデザインによって、今度は新しい仕事のあり方が提案されるのです。
プロトタイピングユーザーにとってはインターフェースがすべて。
優れた企画が必ずしも優れたサービス/プロダクトになるわけではありません。あるアイデアを具現化する上では、コスト、スケジュール、技術、インフラ構築など様々なハードルがあります。それらあらゆる事象をあらかじめ想定することは不可能です。説得力のあるサービスモデルや機能要件であっても、それを実際にユーザーが接するインターフェースとして有効に成立させるためには様々な試行錯誤が必要です。例えば、そのシステムで扱う情報オブジェクトの単位や性質を定義して、それらが画面上でどのような形で表現されるべきかを検討しなければいけません。また操作の基本原理となるレイアウトの階層構造やナビゲーションスキーム、機能分類とコンポーネント表現など、ユーザーが認知するシステムの世界観を適切に組み立てなければいけません。
デザイン駆動型のシステム開発では、詳細な技術要件を検討する前に、インターフェースプロトタイプを作成します。ユーザーにとってシステムがどのように映り、どのように振る舞うのかを先行して考えるのです。インターフェースプロトタイプを作成することで、企画内容がソフトウェアとして適切に表現可能なものかどうか、実装上の整合性があるかどうか、ユーザーにとって本当に有意義なサービスであるかどうか、といった重要な検証を早期に行うことができます。背景にどのようなビジネスモデルや技術基盤があろうとも、ユーザーにとってはインターフェースがすべてだからです。
多くの場合、プロトタイプによって様々な課題が顕在化し、想定していた機能要件/サービス仕様を変更する必要が出てきます。しかしインターフェースとして適切に表現できないような企画/要件は、そもそもユーザーには受け入れられないのです。
もしプロトタイピングを行わずに本番設計が開始された場合、後からデザイン上の重大な問題が発見され、深刻な手戻りが発生するリスクが高まります。膨大なコストをかけて構築したシステムが、実際には使いものにならないという事態が起きます。そのため、昨今注目されているリーン式の開発を実践する上でも、反復的なプロトタイピングはデザインプロセスの中心的な活動となります。
デザインシステムデザインの適応力を高めるヴァイアブルモデル。
アイデアをエンジニアリングのラインに乗せるためには、デザインを構造化する必要があります。合理的なルールによって組み立てられた構造的なヒューマンインターフェースは、システムの開発効率、拡張性、応用性、操作性を高めます。
ソフトウェアフレームワークやコンポーネントを実装する上での設計仕様、または分業された大規模システム開発における設計指針として、インターフェース構成、ユーザーインタラクション、コントロール表現、スタイルなどを定めたデザインシステムを作成します。
デザインシステムの役割は、ヒューマンインターフェースに一貫性を与えることですが、同時に、ダイナミックに変化するデザイン要求を随時取り込んでシステムライフサイクルをヴァイアブル(存続可能)にすることでもあります。
デザインシステムは、一定の構成ルールを示すだけでなく、実際の開発現場で生み出された新しい表現や、運用中に発見されたデザイン問題を抽出して反映する、組織におけるデザインノウハウのハブとなります。
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