「ソシオメディア・フォーラム 2002年10月 世界から見た日本企業のウェブ・アクセシビリティ」
去る2002年10月9日、東京新宿区のグランドヒル市ヶ谷において、ソシオメディア・フォーラム2002年10月「世界から見た日本企業のウェブ・アクセシビリティ」が開催されました。
フォーラムの概要
今回は「世界から見た日本企業のウェブ・アクセシビリティ」と題して、W3C の WAI(ウェブ・アクセシビリティ・イニシアチブ)を策定したマイク・パチェロ氏をゲストに迎え、フォーラム前半は海外の最新動向のご紹介を中心にした基調講演、後半は日本で既にウェブ・アクセシビリティに積極的に取り組む企業のウェブ担当者とのパネルディスカッションを行い、日本における企業ウェブサイトのアクセシビリティのあり方を考える場となりました。
マイク・パチェロ氏プロフィール
ITのアクセシビリティの啓蒙・研究・開発を行う米国 WebABLE 社の CAO(チーフ・アクセシビリティ・オフィサー)を務め、2002年に欧米で企業向けのコンサルティングを行う The Paciello Group を設立し代表を務める。
世界的に有名な企業のコンサルティングを数々行うなどの、ウェブ・アクセシビリティの分野においては世界的な第一人者の一人である。また、W3C とホワイトハウスの依頼を受けて策定した「WAI(ウェブ・アクセシビリティ・イニシアチブ)」は当時のクリントン政権の正式な推薦を受けた。
ICADD(国際アクセシブル・ドキュメント・デザイン委員会)の共同創始者でもあり、日本では今年6月にアスキーより刊行された書籍「ウェブ・アクセシビリティ」の原著「Web Accessibility for People with Disabilities」の著者でもある。現在、同書のセカンド・エディションを執筆中。
アウトライン
- マイク・パチェロ氏(米国パチェロ・グループ代表)講演
「Web Accessibility for the 21st Century ~米国企業のウェブアクセシビリティ~」- アクセシビリティはコーディングだけではない
- 国際的なウェブアクセシビリティの標準
- 米国リハビリテーション法508条の要求
- なぜアクセシビリティがビジネスとしてよいのか?
- 国際的な企業の取り組み/米国企業の取り組み
- ウェブ・アクセシビリティの3大要素
- パネルディスカッション
「日本企業サイトのウェブ・アクセシビリティのあり方」- 企業の取り組みのご紹介
- 企業ウェブサイトにとってのアクセシビリティ
- 音声ブラウザのデモンストレーション
- ウェブ・アクセシビリティの最も多い問題
- 会場の皆様とのディスカッション
今回のポイントとサマリー
- マイク・パチェロ氏 基調講演「米国企業のウェブ・アクセシビリティ」
- 米国国政としての取り組み
米国では、Web サイトのみならず、電子機器や行政サービスなども対象に「リハビリテーション法508条」の遵守が義務付けられおり、国政的な取り組みが行われている。 - ビジネスとしての観点
インターネット上では、サービスを提供する側・提供される側双方にとって、これまでにない価値と機会をもたらす。そこではこれまで活発な社会参加を阻害されがちであった高齢者・障害者の人々も、積極的な活動を行うことが可能になる。アクセシビリティを重視したWebサイトの存在により、Web 上のマーケットはさらに加速・拡大し、発展する。 - 企業としての取り組み
一般的に、企業の取り組みは、アクセシビリティへのポリシーを名言し、自社のガイドラインを公表することから始められる。開発の現場では、製品やサービスを自社のガイドラインに沿って、正しくテスティングし、実際に正しく使用できることを確実に確認することになる。一方で、企業ポリシーを適切に維持し続けるためには、ガイドラインの標準化活動や社員教育も不可欠である。 - ツールの利用、技術的な問題
アクセシビリティを具体的に実現するための手段として、制作者もしくは開発者が、各種のチェックツールを適切に利用することが挙げられる。但し、一般的に、最先端の技術はアクセシビリティの観点から問題があることが多い。障害者自身が開発の場に参加し、問題点を発見する過程を設けることが必須である。
- 米国国政としての取り組み
- パネルディスカッション「日本企業サイトのウェブ・アクセシビリティのあり方」
- パネリスト
- マイク・パチェロ氏
- 株式会社日立製作所 デザイン本部 本宮志江氏
- 富士通株式会社 fujitsu.com室 高橋宏祐氏
- 毎日新聞 ユニバーサロン編集長 岩下恭士氏
- アクセシビリティへの取り組みのご紹介
パネルディスカッションでは、既にWebアクセシビリティに取り組んでいる企業担当者の視点から、これまでの活動の経緯や、大規模なサイトに対して定着させていく上での課題など、活発な意見交換が行われました。- 富士通:2002年6月に「ウェブアクセシビリティ指針」を発表。以前から取り組んでいた社内向けガイドラインを再検討した後、公開するに至った。制作者や技術者が対応できるように、曖昧な記述をさけ、できる限り具体例を盛り込むことにした。)
- 日立製作所:2000年12月に「Web ユニバーサルデザインガイドライン」を公開。米国主導でアクセシブルな Web サイトの重要性がうたわれ、対応に至った。視覚障害者向け・高齢者向けなど、利用者の特性を分けてデザイン指針を提供している。
- 毎日新聞:1998年12月より、アクセシビリティ関連の情報を扱う「ユニバーサロン」を開始。障害者だけを対象にするのではなく、一般の人々も対象にした「情報バリアフリー」をポリシーに掲げた活動を継続している。
- 会場との質疑応答(抜粋)
- 「アクセシビリティとユーザビリティの関係は?」 :アクセシビリティは、基本的に障害がある方や高齢者を対象とした配慮であろう。ユーザビリティとは、ユーザーを中心に配慮することを包含して定義されるが、その中に、アクセシビリティという考え方を盛り込むことが正しいと考えている。(パチェロ氏)
- 「米国におけるイントラネットのアクセシビリティ対応の傾向は?」:米国では「障害を持つアメリカ人法(Americans with disabilities Act, 1990)」があり、障害のある従業員に対しても、アクセシブルな対応が義務付けられている。イントラネットに対しても同様である。(パチェロ氏)
- パネリスト
謝辞
今回のフォーラム開催にあたっては、多くの企業様より後援をいただき、無事成功に至ることができました。約200名のご来場者と後援・協賛いただいた企業の皆様には改めて深く御礼申し上げます。
- 後援:毎日新聞社、株式会社日立製作所、富士通株式会社、株式会社アスキー、株式会社デジタルスケープ、富士ゼロックス株式会社、富士通アプリコ株式会社
- 協賛:日経デザイン、web creators、Web Designing、Web Site Design、C&R社プロフェッショナル・エデュケーション・センター(PEC)
プレス紹介記事
- 毎日新聞ユニバーサロン
「ウェブデザイナーなど200人が参加--ソシオメディアがアクセシビリティフォーラム」 - MYCOM PCWEB
「アクセシブルなウェブのために ウェブ・アクセシビリティ・フォーラム開催」