58. ガッツを見せる

Show Guts

デザイン上の要求をすべて満たそうとすると形にならない。デザインには仕様を割り切るためのガッツが必要。ユーザーの誤解やクレームを恐れて網羅性や論理性や厳密さを優先しすぎると、情報やオプションが多くなってむしろ基本的なデザイン趣旨がわかりにくくなる。

例えば iOS のスペル補正は、修正候補が表示された際、ユーザーが選択操作をせずにそのままタイプを続けることで修正が適用される。逆に、その候補を無視したい時に、候補表示部分(×印)をタップする。

このような仕様は、場合によってはユーザーが意図しない結果をもたらしユーザビリティを損ねる恐れがある。しかしもし毎回ユーザーが候補の選択操作をしなければならないのであればスムーズな入力が妨げられてしまう。

iOS では、モバイル環境における入力操作のエクスペリエンスとして、ユーザーが正しくタイプできることよりも、間違っても自動的に修正されることを目指している。iOS のスペル補正は、トレードオフにおいて最も大切なことを見極めそれ以外を割り切るという、ガッツのあるデザインの一例。

iOS のテキスト入力欄でスペル補正の候補が出ている様子