「ソシオメディア・フォーラム 2003年1月 2003年のウェブ・ユーザビリティを占う」
去る2003年1月28日、東京都新宿区の野村カンファレンスプラザにおいて、ソシオメディア・フォーラム2003年1月「2003年のウェブ・ユーザビリティを占う」が開催されました。
フォーラムの概要
ソシオメディアは今年も、企業ウェブ担当者およびウェブ制作者を対象にした情報提供型イベント「ソシオメディア・フォーラム」を開催していく予定です。
2003年第一回目となった今回は、今年一年間に予定するソシオメディアの活動計画の紹介をあわせ、二部構成で開催されました。第一部は、メインタイトル「2003年のウェブ・ユーザビリティを占う」と題したプレゼンテーション、第二部は「米国アクセシビリティ最前線レポート」と題し、昨年12月に毎日新聞社の主催で行われた「米国アクセシビリティ研修ツアー」への参加報告を行いました。
アウトラインとまとめ
- 第一部:「2003年のウェブ・ユーザビリティを占う」- 今年の6つのキーワード –
上野 学(弊社クリエイティブ統括役員)、榊原春己(弊社マーケティング担当マネージャー)- 今年の6つのキーワード
- 「サイトの大規模リストラクチャリング」
コーポレートサイトの肥大化、企業戦略とウェブ展開の不一致にともない、サイトの統合と分割が行われる。インフォメーションアーキテクチャ(情報の構造化手法)の重要性が高まる。 - 「ウェブのアプリケーション化」
ウェブベースの業務システムや、より高度なオンラインサービスなど、「機能性をもったウェブサイト」が一層増加してゆく。情報の検索装置という位置づけから、複合メディアのインターフェイスという役割に移行していく。そこでは生産性や豊かな利用体験といったものが求められ、インタラクション(ユーザーとシステムの相互作用)デザインの重要性が高まる。 - 「プロトタイピングの実践」
付加価値としてのユーザビリティではなく、サービス開発の基本思想として「ユーザー中心」のコンセプトが拡大する。ユーザーの利益を最大化するための表現方法が求められるため、「プロトタイプを繰り返し作成する」など、従来のソフトウェア開発的なアプローチが必要になる。 - 「ノウハウの内部蓄積」
運営者側に蓄積されたノウハウが、企業の重要なリソースとして認識されるようになる。「ユーザー中心」「顧客中心」といったコンセプトとともに、長期的な企業戦略と連動した、技術的・論理的・戦略的なシステム開発、すなわち「ユーザビリティエンジニアリング」の実現が意識されるようになる。 - 「ガイドラインの整備」
まず最初に、表層的な目的(サイト構築、メンテナンスなど)実現のためのガイドライン整備がが必須になる。さらに、ウェブ戦略と運営ノウハウとの関連を意識した「サイト構築プロセス全体をカバーする」各種ガイドラインが必要となる。 - 「アクセシビリティ対応の本格化」
大手企業や公共性が強い組織による取り組みがより本格化し、アクセシビリティの考え方そのものが一段と普及する。JIS 規格化の動向も追い風になる。アクセシビリティに対応するためのスキルは、担当者や制作者にとって必須な要件となってゆく。
- 「サイトの大規模リストラクチャリング」
- 質疑応答(抜粋)
- 質問:「サイト構築のコンサルティング業務に関わっている。クライアントより『ユーザビリティがいかに費用対効果に結びつくか』を問われる機会が多い。何らかの指針を示すことはできるか。」
- 回答:ECサイトであれば、売り上げの変化によって効果を計ることができるが、情報提供サイトにおいては、ユーザビリティ向上による企業の利益を定量的に示すのは困難なことが多い。しかし、想定されるタスクごとにテストを行うことによって、「タスク達成率」「操作時間の短縮」「主観的満足度」などの変化を定量データとして示すことができる。
- 今年の6つのキーワード
- 第二部:「米国アクセシビリティ最前線レポート」
植木 真(弊社プロダクトマネージャー)、特別ゲスト 岩下恭士氏(毎日新聞社「ユニバーサロン」編集長)- 自己紹介とツアー企画の目的(岩下氏)
自分が97-98年にアクセシビリティ事情を視察する目的で留学した際に受けた影響はとても大きかった。今回は、日本でアクセシビリティに関心を持つ皆さんに米国の現場を見ていただくことを主な目的として目的にツアーを企画した。 - 米国のアクセシビリティ対応事例の紹介
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マイク・パチェロ氏(The Paciello Group 代表)による、米国初の「障害者専門ユーザビリティセンター」設立の経緯。
- ラリー・ゴールドバーグ氏(ボストン公共放送「WGBH」、メディアアクセスグループディレクター)による「アクセシブルムービー」への取り組み。
- シンシア・ワデル氏(ICDRI=International Center for Disability Resource on the Internet、エグゼクティブ・ディレクター)による、全米発の地方自治体によるウェブ・アクセシビリティ・ガイドライン策定への取り組み。
- ボブ・リーガン氏(米マクロメディア、アクセシビリティ担当シニアプロダクトマネージャー):マクロメディアの製品を通じてウェブのアクセシビリティ向上を進めるため、全社横断的に実施した取り組み。
- その他、博物館・鉄道・地下鉄・空港など様々な公共施設や交通機関のアクセシビリティに関する報告が行われました。(当レポート詳細は、毎日コミュニケーションズ発行「Web Designing」2003年2月号にも詳しく掲載しています。あわせてご覧ください。)
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- ツアーを終えて(岩下氏)
米国と日本を比較すると、アクセシビリティへの関心、障害者への配慮の仕方が違うことを改めて感じる。ハードやインフラ面では日本のほうが進んでいる面も多い。しかし「人」というソフト面では日本はまだまだ。自分自身も視覚障害者であるが、米国国民の方がフランクに「困っていることはあるか?」と話しかけてくれるので、安心して行動できる。国民性の違いが大きく関係していると言えるだろう。
- 自己紹介とツアー企画の目的(岩下氏)
謝辞
当フォーラムの開催にあたり、約130名のご来場者の皆様には改めて深く御礼申し上げます。
今年も「ソシオメディア・フォーラム」を宜しくお願いいたします。