シリーズで開催しているUX戦略フォーラム。6回目となる今回は「イノベーション組織の推進」をテーマにします。国内外のUX領域のリーダー6名を招き、UX推進組織やUXプロジェクトにおけるリーダーシップのあるべき姿、企業におけるUXの成熟度を向上させる諸活動、UXを活用してイノベーションを実現する推進者の役割、といった内容で構成します。具体的な取り組みの事例やケースの分析、そして、会場内での交流を通じて、UX戦略のあり方を「組織推進」の側面から探り、あるべきUX戦略の方向性を占います。
本フォーラムは盛況のうちに終了いたしました。
プログラム
英日/日英の同時通訳あり
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9:30開場
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10:00 – 10:10主催者挨拶
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GEにおけるイノベーションのためのUX組織戦略UX Organization Strategy for Innovation in GE
GEは今から5年前、あるソフトウェア会社から1人のキーパーソンを招聘した。その当人であるグレッグ・ペトロフ氏は、GEに入社後すぐに、同社におけるエクスペリエンスを重要視する企業風土作りに着手し、現在では100人を超える規模のユーザーエクスペリエンス センターオブエクセレンス(UX CoE)を率いるとともに、CXO(チーフ・エクスペリエンス・オフィサー)の立ち場としてGE全体に対し、エクスペリエンス・デザインを中核に据える組織風土作りに取り組んでる。
本講演では、同氏が取り組んできたエクスペリエンスに関わる組織作りの歩みとともに、現在取り組んでいるUXを主軸に据えた戦略とそのリーダーシップのあり方について紹介します。
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管理を超えた信頼の選択 – 不確実性の時代におけるリーダーシップスキルとはChoosing trust over control – Leadership skills for uncertain times
デザインプロセスは、結果が不確実な状況下の中で新しいものを作り出すための指針となります。デザインプロセスの実践者は、プロセスを実行することによって、不確実な中にあっても安心や自信を得ています。私たちは質問から始め、プロセスを実行し、そして、素晴らしい結果を創造することが可能です。
しかし、不確実さが未来そのものや、組織での役割、また仕事の将来に関わる場合は、自信は弱まってしまいます。
不確実さが、製品よりも我々自身や組織にある場合、ほとんどの人はコントロールすることで解決しようとします。曖昧なことを避け、「良い判断」が心地よく感じるからです。本講演では「不確実さを伴った複雑な現実世界において、どのようなリーダーシップを展開するのかベストなのか?」という疑問に対して答えを導きます。
私がこれまでに培ってきたリーダーシップのデザイン、即興劇、そしてコーチングや教育の経験から、以下の内容をご紹介していきます。- 組織を人々の交流のプロセスとして捉える方法
- これまでと異なる文化を取り入れる際の恐れについて、またその恐れを克服する方法
- 成果が出るかどうかが不確実な新しいことに挑戦する難しさ、そして失敗への恐れとどのように対峙すべきか
- 直感的に信頼を築くテクニックについて
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12:05 – 13:00休憩・昼食(会場内でのお弁当)
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UXの組織への浸透の取り組み ~日立の実践事例~Spreading UX to Organization – Case Study in Hitachi, Ltd. –
UXは、企画、開発、販売、サポートなどあらゆるフェーズで使える考え方である。
日立では、製品サービスそのものに価値があるのではなく、お客様が日立の製品サービスを使っていただく「経験」にこそ、価値があると考え、UXの考え方を様々な事業分野に取り入れてきた。
本講演では、日立のITプラットフォーム事業分野において、UXの考え方を組織内へ浸透させていったアプローチ、UX活用事例を紹介する。
組織への浸透には、プロジェクトでの実践活動、プロセス整備、人材育成といった側面だけでなく、意識改革、組織風土にも踏み込む必要があり、日立では自社組織文化の分析、分析結果に基づいた施策も行っている。自組織にあった取り入れ方を試行錯誤しながら見つけていくことが成功へのキーとなる。 -
NECのUX推進のための組織マネジメントOrganization Management in NEC to Drive User Experience Methods & Theory
ICT を活用したシステムやソリューション開発の様々な場面において、ユーザエクスペリエンス(UX)が活用されてきている。UXは、上流フェーズで顧客のニー ズを捉え、設計・開発フェーズで使いやすさを向上させ、製品販売後フェーズで保守や修理のしやすさを向上させるために有効といわれている。しかし、製品や システムの企画や開発を行う実現場でのUXの活用はあまり進んでいるとはいえない。
本講演では、講演者が取り組んできたUX推進のための組織マネジメントについて紹介する。UXが何に使えるのか、業務にどう関連づけられるのかという社内 の認識を向上させるために、UXの効果分析とベストプラクティス作成を行った。さらに、人材育成、プロセス、社内のUX推進体制を整備することで、さまざまな部門やプロジェクトで組織的にUXを活用できるようにした。
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UXの備えあれば「イノベーションのジレンマ」なしProviding UX is preventing The Innovator’s Dilemma
ソニーにおけるUIの改善、ユーザビリティの向上、アクセシビリティの拡大等の活動を通して、講演者が行ってきたさまざまな施策(ルール・ツール・プロセス・教育)が企業活動の中でどのようなポジションに位置するかを俯瞰しながらリーダーシップのあり方を振り返る。テレビとデジカメ、スマートフォンとステレオなどのような、複数の事業部門の商品やサービスの連携を実現させ、快適な顧客体験を感じていただくための縁の下の工夫を紹介。
イノベーションのジレンマの題材ともなっている、ソニーが過去経験したイノベーションの成功事例・失敗事例から、ユーザーエクスペリエンスの転機が商品ライフサイクルの転機になっていることを知り、技術戦略、事業ポートフォリオへの影響についての考察を行う。ユーザーエクスペリエンスの転機の波をいかに早く察知して企業活動に活かしてゆくかの事例を紹介する。
講演タイトルは、ことわざ「備えあれば憂いなし」の類比。 -
UXカンバセーションの変革:組織的なUXリーダーシップは対話力にありChanging the UX Conversation: Organizational Leadership is Conversational Leadership
世界中の人々は良いUXを創り出せる組織文化を形成するために奮闘している – ユーザーがよりよい体験を製品やサービスを通じて得られるように。しかしこれは大変に難易度が高い。
変化は難しい:あらゆる種類の組織の変化はとてつもなく難しく、頼れるベストプラクティスも少ない。
デザインは組織の伝統に挑戦する:UXやデザインを取り入れるということは伝統的な価値観、品質の定義、部署間の関係、そしてマネジメントと意思決定の歴史への挑戦となる。
UXリーダーは性格的な素質を選ぶ:UXを推進する人物は組織から阻害されているように感じてしまう。誤解されているように感じ、また努力が認められていないように感じてしまう。マークの大企業と10年以上仕事をした経験と最近のアメリカの技術系の大企業のUXマネージャーへのインタビュー内容を元にこの講演は構成される。これらの企業のストーリーと、カーネギーメロン大学デザイン大学院で教えるコースの内容を用いて、マークはこれらの点について触れていく:
- デザインカルチャーのエッセンスとは
- 企業のUX成熟度を高めることに注力しているUXリーダーの事例
- 「対話」視点で見るリーダーシップと組織文化の変革
- UXリーダーシップ、説得・議論・命令を超えるツールとしてのコミュニケーションとその影響についての対話型・実験型アプローチ
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16:45 – 16:55ご案内
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17:30パーティー開始
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18:30 – 19:30グレッグ・ペトロフ× 篠原稔和Greg Petroff x Toshikazu Shinohara対談「インダストリアル・インターネットの中核にUXあり – GEのCXOに聞くイノベーションのためのUX組織 – 」Discussion Session “There is UX in the center of Industrial Internet – UX Organization for Innovation, answer from GE CXO -“
今回のキーノートスピーカーであるグレッグ・ペトロフ氏は、GEの GE Digital において、同社が推進する「インダストリアル・インターネット」において数々の貢献を果たしてきています。そこで、IoT戦略におけるUX組織の意義や、経営ツール「FastWorks」におけるUXリーダーの役割などについて、ソシオメディア代表の篠原稔和が同氏との対談を通じて徹底的に解明します。
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20:30パーティー終了
開催概要
日時
- 2016年5月27日(金)10時〜20時30分
(9時30分受付開始、17時30分〜20時30分パーティ)
会場
ステーションコンファレンス池袋
(東京都豊島区西池袋1-11-1、メトロポリタンプラザビル12F)
対象者
企業経営者、各種製品やサービス事業責任者およびマネージャ職の方、その他UXへの組織的な取り組みにご関心のある方。
定員
120名(定員に達し次第、締め切らせていただきます)
参加料
これまでUX戦略フォーラムへお越しのお客様は過去来場者割引をご利用いただけます。
昼食付き、パーティ&対談券あり | 50,000円 35,000円(過去来場者割) |
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昼食付き、パーティ&対談券なし | 45,000円 30,000円(過去来場者割) |
参加申込/お支払い方法
「参加申し込み」ボタンを押して表示されるフォームに必要事項を記入してお申し込みください。お支払いは、参加申し込みをいただいた方にお知らせする指定口座へお振込いただきます。なお、当日会場でのお申し込み/お支払いは受け付けておりませんので、ご了承ください。
主催
ソシオメディア株式会社
スピーカー
- グレッグ・ペトロフ Greg Petroff
- GEソフトウェア CXO(チーフ・エクスペリエンス・オフィサー)、GE UX CoE ジェネラルマネージャー、GE Digital CXO(チーフ・エクスペリエンス・オフィサー)。
グレッグ氏は、独SAPのプロダクトマネジメント担当VPとして、製品開発からデザイン戦略までを担当。その後、2011年に米GEのUXのジェネラルマネージャーに就任してUXの組織化活動を開始する。2013年には同社のCXOに昇格し、同社が推進する「インダストリアル・インターネット」におけるプラットフォーム事業(Predixプラットフォーム)のUX戦略を中心に、UX専門の組織化と全社に対するUXの啓発活動を担当している。 - ハナ・デュ・プレシHannah du Plessis
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ハナ・デュ・プレシ氏はコミュニティが自身でよりよい未来を創れるようにするための企業 Fit Associates 社の代表を務める。プレシ氏は南アフリカのアパルトヘイト施策をはじめとする厳しい現実の中で育ち、そのことが彼女の人間の可能性を信じる信念とソーシャルイノベーションへの情熱を燃やす原動力となっている。
アパルトヘイトからの変換期には、学生でありながら2つの学校を統合する活動を率いていた。彼女のインテリアデザイナーとしてのキャリアは10年、3つの大陸、18個のプロジェクトにまたがっている。彼女は様々な会社と働き、デザインファームの共同設立者にもなった。彼女のクリエイティブへの愛は、絵画作品の出版やアートギャラリーへの出展、そしてステージではプレゼンター、女優、即興詩人、ダンサーなど、実に様々な表現手法で表されている。
プレシ氏はインド工科大学のデザイン方法論の修士、プレトリア大学のインテリアデザインの学位とファインアートの修了証書を持つ。デザインとイノベーションの領域で国際的に教鞭も執っている。現在は2つの大学で教えており、ニューヨークのスクールオブビジュアルアーツ(the School of Visual Arts)における「ソーシャルイノベーションのためのデザイン」プログラムの大学院の教員、そしてカーネギーメロン大学デザイン大学院では特別教授を務めている。
- 的池 玲子Reiko Matoike
- (株)日立製作所に入社後、企業向けソフトウェアのマニュアル開発に従事。
2008年に人間中心設計の考え方に出会い、2009年ユーザエクスペリエンス専門部署発足以降、製品サービスの商品企画・設計開発・販売フェーズでユーザエクスペリエンス向上活動を推進中。
組織内への人間中心設計の考え方の浸透作戦、人材育成、社内でのUX認定制度など、組織で持続的に活動をしていくため施策も推進中。 - 河野 泉 Izumi Kohno
- 1991年大阪大学大学院基礎工学研究科修士課程終了。同年NEC入社。
研究開発部門にて、エージェントインタフェースや情報ナビゲーションなどヒューマンインタフェースの研究に従事。2009年よりユニバーサルデザイン、人間中心設計のNECの全社推進活動に従事。人間中心設計を適用した製品開発プロセス整備や人材育成などを行い、製品/サービスのユーザーエクスペリエンスを組織的に向上させる活動を行う。
現在、事業イノベーション戦略本部デザインセンター、クリエイティブマネージャー。人間中心設計推進機構理事、HCD-Net認定人間中心設計専門家。情報処理学会、日本デザイン学会各会員。工学博士。 - 平山 智史 Tomoshi Hirayama
- ソニー株式会社に入社後、家庭用コンピュータ、PalmTop、MagicLinkなどの商品開発(ソフトウェア)に従事。アーキテクチャ研究所(研究企画)、コーポレート戦略部(新規事業開発)、コアコンポーネント事業グループ技術戦略部(ソフトウェア戦略)、ソフトウェア設計技術センター、UX・商品戦略本部(UI/UX戦略)などに在席。2008年全社のユーザビリティ向上のためのUI技術企画部を統括。各種ユーザビリティ社内ルール・ツール・プロセス・教育教材の開発、UXリサーチなどの施策を担当。その間に全社の基幹技術研修の講座企画委員長(ソフトウェア・UI領域)、Chief Distinguished Engineer(UI領域)を歴任。分社化による機能移管があり2016年4月1日よりソニーGM&O株式会社 ユーザビリティ品質技術部に所属。チーフUXストラテジスト。
- マーク・レティグ Marc Rettig
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レティグ氏は Fit Associates LCC の創設者である。Fit Associates はピッツバーグを中心に文化、変化、そして複雑なものを扱うコンサルティングファームである。
彼は組織が社会的な課題に対して根っこから向き合うことを支援しており、組織的文化から都市システムと連動した製品寿命など、テーマは多岐渡る。Fit ではコーチング、リサーチ、イマージョン体験、ファシリテーション、共創デザイン、アートなどを用いて、人々や組織を本来の目的とつなげること、そしてその目的を世界への多大なインパクトとつなげることを支援している。35年にも渡るキャリアとこれまでの長いクライアントリスト(Philips、日産、マイクロソフト、Whirlpool、Seagate、Honeywell、SAP、そして数えきれないほどのスタートアップ企業)によって、レティグ氏は組織の中で誰もがデザイナーのように振る舞うためにはどうすればよいかを熟知している。これにより、彼は2015年のエンタープライズUXカンファレンスで「組織文化のデザイン」というテーマのリーダーを務め、企業文化についてのキーノートを担当した。
レティグ氏は2つの大学で教員も担当。ニューヨークのスクールオブビジュアルアーツ(the School of Visual Arts)における「ソーシャルイノベーションのためのデザイン」プログラムの大学院の教員、そしてカーネギーメロン大学デザイン大学院では特別教授を務めている。
- 篠原 稔和 Toshikazu Shinohara
- ソシオメディア株式会社 代表取締役
「User Experience Design Consulting」を標榜する、ソシオメディア株式会社の代表。自らも、企業組織やチームへのコンサルティング活動やITスタートアップでの経験を活かし、UXやITとデザインに関わる包括的な専門性を用いながら、企業のイノベーションに向けたUX戦略コンサルティング活動に注力している。
2005年より、DESIGNとITとを横断的に探求する「DESIGN IT! Conference / Forum / magazine」、2014年より、UXを企業戦略の中核とするテーマを探求する「UX戦略フォーラム」を、それぞれ企画・開催。欧米の最新動向や研究動向を紹介しながら、日本のUX市場の拡大のための活動に従事している。
また、NPO法人 人間中心設計推進機構の理事、UXPA Japan のプレジデントなどを歴任。最新の監訳書に『ユーザーエクスペリエンスの測定 – UXメトリクスの理論と実践 -』(東京電機大学出版局、2014年11月)がある。