「第13回 WAB フォーラム SimpleWeb ワークショップ」
2006年2月15日、東京都千代田区の大手町サンケイプラザにおいて、Web 広告研究会の主催による「第13回 WAB フォーラム」が開催されました。
ソシオメディアはフォーラム内で同時開催されたワークショップに出展し、ウェブページをシンプルな「テキスト版」に変換する、サーバーベースのソリューション「SimpleWeb(シンプルウェブ)」のご紹介を行いました。デモンストレーションや導入事例を交えたこのワークショップには、50名以上の方のご参加をいただきました。
アクセシビリティとは
ウェブアクセシビリティとは、「障害者、高齢者を含め、すべての人がウェブで提供されている情報や機能にアクセスし利用できること」を指します。2004年6月に「JIS X8341-3:2004(ウェブコンテンツ JIS)」として日本工業規格による指針が公示されたことで、自治体など公的機関での対応が急務となっているほか、公共性の高い大企業のウェブサイトでも積極的な対応が求められており、社会的な関心が高まっています。
SimpleWeb は、ウェブサイトのアクセシビリティ対応にかかる労力や手間を軽減するソリューションです。ただし、アクセシビリティの確保は「SimpleWeb を導入すればそれで終わり」というものではなく、より高いアクセシビリティの実現に向けて継続的な取り組みを行うことが最も重要だと言えます。
SimpleWeb の特徴
SimpleWeb には、次のような特徴があります。
- アクセシビリティ対応のテキスト版ページを自動生成
- サーバーベースのソリューション:導入が簡単で、専用のクライアントソフトウェアも不要
- 表示の調整機能:ユーザーが文字の拡大や配色変更などを行える
- セマンティックアナライザー:ページの構成要素を識別し、状況に応じて最適なテキスト変換を実現(例:table 要素の用途を識別し、レイアウトテーブルのみをリニアライズ)
- SimpleWeb の導入:既存ページをアクセシビリティ対応させる場合に比べ、コストが一定で導入が早いというメリットがある
特徴のご紹介のあと、SimpleWeb デモによるリアルタイムのテキスト変換を実演しました。当日配信されたばかりの最新ニュースを瞬時にシンプルなテキスト版に変換する様子は、参加者の皆様も熱心にご覧になっていました。
SimpleWeb 導入企業のご紹介
これまでに SimpleWeb を導入いただいた企業の中からお三方をお招きし、アクセシビリティ対応の取り組みと SimpleWeb 導入によって得られるメリットについてうかがいました。
- 旭化成株式会社 総務部広報室 森山博之氏
- 三菱電機株式会社 宣伝部 デジタルメディアグループ グループマネージャー 大矢富保氏
- ヤマハ株式会社 広報部 ブランド・Web 戦略推進グループ ブランドマネジメント担当主査 松岡克夫氏
旭化成・森山氏:「CSR の観点からもアクセシビリティ対応は重要」
ソシオメディア:企業サイトのアクセシビリティ対応について、どのようにお考えですか?
森山氏:CSR(企業の社会的責任)の観点からも、企業サイトのアクセシビリティ対応は重要だと考えています。弊社のサイトでも以前からアクセシビリティ対応ツールの導入を検討していましたが、専用クライアントソフトウェアが必要なものが多く、敷居の高さを感じていました。モニターテストするためだけでもクライアントソフトをインストールする必要があり、未承認のソフトをPCにインストールすることにかなり抵抗があるようで、社内の協力が得られにくいという問題もありました。
そんな状況の中で SimpleWeb の存在を知りました。SimpleWeb ならばクライアントソフトが不要ですし、導入の手間もかからず、コストも抑えられる…と、弊社にとってのメリットが大きいため、導入を決定しました。
ソシオメディア:企業サイト以外にも SimpleWeb を活用する機会があるでしょうか?
森山氏:弊社のイントラネットの一部では、Netscape 4.x 向けに表示が最適化された HTML が使用されています。こうした複雑にコーディングされた HTML であっても、SimpleWeb を使えばシンプルに情報だけを抽出することができ、旧環境を刷新するまでの対策として有効ではないかと考えています。
三菱電機・大矢氏:「『連続性』が SimpleWeb 導入の決め手」
ソシオメディア:サイト構築に HCD(Human-Centered Design:人間中心設計)の手法を取り入れていらっしゃるとのことですが、その際に重視されていることはありますか?
大矢氏:私自身、もともとプロダクトデザインを行っていたこともあり、HCD の重要性はよく理解しています。HCD メソッドを取り入れたサイト制作の中で大切なのは「連続性」だと感じます。交通機関の例として鉄道の場合で考えると、一駅だけでユニバーサルデザインに取り組んでも大きな効果は得られません。すべての駅からバリアを取り除いてはじめて、ユニバーサルデザインを実現したと言えるのです。
ソシオメディア:そうした「連続性」を確保できることが、SimpleWeb 導入の決め手になったということでしょうか?
大矢氏:弊社のサイトは、具体的なページ数を簡単に把握できないほど大規模ですし、日々コンテンツが増加しています。このようなサイトでは、手作業で連続性を確保しながらアクセシビリティ対応を図るのが非常に困難です。以前はオリジナルページと別にアクセシビリティ対応ページを用意していましたが、膨大な労力と手間がかかるうえ、オリジナルにあわせて更新を行うのも大変でした。SimpleWeb は、導入と同時に下位階層まで一挙にテキスト版を提供できますし、更新の手間がほとんどなくなったことも大きなメリットだと感じます。
ヤマハ・松岡氏:「CSS 化推進のためのチェックツールとしても有効」
ソシオメディア:以前からアクセシビリティ確保のための取り組みを行っていたのですね?
松岡氏:はい。弱視や色覚障害をお持ちの製品ユーザーから、テキスト版の楽譜を提供して欲しいという要望が寄せられたため、「テキスト版マニュアルライブラリー」というコンテンツを提供しています。このテキスト版ページの制作にあたっては、独自のガイドラインも策定しました。
ソシオメディア:そうした取り組みを続ける姿勢が SimpleWeb のコンセプトと合致したということですね。SimpleWeb は他にも CSS 化の推進に有効だとお聞きしましたが。
松岡氏:現在、社内外のコンテンツ制作者に「CSS の使用」と「論理的な文書構造の記述」を徹底させているところです。ただ、そうした場面で「なぜ論理構造の記述が大事なのか」といったことをうまく説明できないことも多かったのです。そんなとき、オリジナルページと SimpleWeb によるテキスト版ページを比較させると問題点が一目瞭然なことに気付きました。このように SimpleWeb を CSS 化推進のためのチェックツールとして活用することで、効率的なサイト品質管理を行えるようになったと実感しています。
ソシオメディア:SimpleWeb にこうした使い方があるとは、私たちも予想外でした。ありがとうございました。
Q&A
最後の時間では、参加者の皆様から寄せられた SimpleWeb に関するご質問にソシオメディアがお答えしました。
質問:iモードで自社のテキスト変換結果を見てみたところ、PHP など動的な箇所の表示がおかしくなっているようだが、どういった原因が考えられるか?また、PDF の対応はどのように行っているのか。
回答(ソシオメディア):PHP や ColdFusion などで動的に HTML を生成するサイトであっても、SimpleWeb は問題なくご利用できます。状況が確認できないため想像になりますが、文字コードが適切に指定されていない場合、文字化けしてしまうことがあります。これはもちろん、静的な HTML であっても同様です。HTML として文字コードをきちんと提供することで対応可能です。また、PDF へのリンクを提供している箇所では、その旨をお知らせする「クッションページ」を出すことで対応しています。サイトを利用中、意図しない場面で Adobe Reader が起動してイライラした経験は誰もがお持ちだと思いますが、クッションページによってそういった混乱を防ぐことができます。
質問:適用ドメイン外に出た場合はどうなるのか?
回答(ソシオメディア):SimpleWeb の利用範囲外に出ることをお知らせするクッションページを表示することで、ユーザーの心理的負担を軽減しています。
謝辞
今回のワークショップにご来場いただいた皆様に、改めて御礼申し上げます。
今後ともソシオメディアとウェブアクセシビリティ支援サービス SimpleWeb をよろしくお願いいたします。